2011/6/13 月曜日

やらない善より、やる偽善。

Filed under: 制作日記 — 作者 @ 2:53:56

 もう、先週末の話になりますが、宮城県の被災地に写真の修復ボランティアへ行ってきました。

 今となってはお恥ずかしながら、お役に立とう・手伝いに行こうという意識よりも、実際に現地ではどんなことをやっているのかという個人的な興味であったり、私が創る写真作品が誰かに幸福をもたらすことなどないかも知れないが、身につけた技術によって誰かが失った幸福のごく一片を取り戻す手助けくらいは出来るだろう、などと思えば傲慢以外の何者でもないことも少し考えて。どう考えても偽善そのもの。どうであれ、とにかく行ってみることに。

 グーグルで”被災地 ボランティア 写真 修復”といったキーワードで検索してみると、幾つかの募集が上がっていた。ボランティアなど行ったことがない私には、現地の組織がしっかりしていそうで、宿泊の手配に困らないといった用件を満たす募集が必要。そんな虫の良い募集があるかと思っていたら、あった。深夜に早速問い合わせのメールを出す。2時間後には返信が届いていた。

 翌日、仕事場近くでボランティア保険に加入手続きを行う。シゴト場近くの社会福祉協議会で、昼休みの間に加入手続き。これはあっさり終わる。あとは、仙台までの夜行バスの予約を済ませる。

 夜行バスに乗って、土曜日の早朝に仙台入りし、常磐線と代行バスを乗り継いで現地へ。集合場所に集まったメンバーは写真のビギナーから現役バリバリのコマーシャルカメラマンまで色んな立場の方が。作業場では複写と洗浄に別れての作業。

 複写の作業を行う。カゴに収められたアルバムや写真台紙を見て絶句。これは何だろうか。比較的被害が軽微なモノでも、泥にまみれたり、一部が画像が剥離・欠損。状態が悪いモノになると、色素が溶け出し、もはや写真とは言えないようなものも多数。

 他人のプライバシーに関わることなので、流石に画像等を載せるわけにはいかないが、アルバムや台紙に収まった写真を1ページ1ページをとにかく複写してゆく。ある一冊は、旅の記録の数々。ある一冊は、小学校に入学してから卒業までの思い出をまとめたもの。ある一冊は、持ち主の結婚前から挙式・出産・子供の入学まで家庭を築き上げていく一家の歴史そのものの記録。津波が一瞬にして呑み込んだものは、生命や財産だけではなかった。現物を見たからには一枚でも多くの写真を持ち主に還してあげたい。参加した面々は皆、同じ思いだったと思う。途中で学生ボランティアの人に撮影の指導も挟んで作業。あっというまに初日の作業終了。車で1時間くらいの場所にある温泉宿で1泊。翌日も朝から夕方まで同様に作業を続ける。それもまたあっという間に過ぎたというのが実感。お疲れ様でした。

 現地のスタッフの方々はボランティアの受け入れ、行政との交渉やメディアの対応なども平行してこなさなければならず、本当に骨の折れること。それでいて、参加しやすい用件を整えてもらい、私でも参加できる機会をも与えてくれたことは感謝に堪えないところです。写真の一端に関わる身として、いろいろと感じるものがありました。もっと早く気付いていればという点については、少し後悔もありますが、結果として行ってみていろんな意味で良かったと思います。

 各地ではまだ人手は必要なようです。特に写真を生業とされている方には、写真を撮ることやそれに関わることが何をもたらすのかを改めて考える良い機会になるかも知れません。やらない善より、やる偽善。結果としてそれが誰かの役に立っていれば、それは決してこの世に対してマイナスにはならないはずです。

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